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雑学・コラム

2016.10.21

10月はピンクリボンのキャンペーン期間。セルフチェックと乳がんの検診のススメ

Kindai Picks編集部

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医学部
ヘルスケア
オリジナル記事

10月1日夕刻、東京タワーや六本木ヒルズ、明石海峡大橋まで全国の観光名所がピンク色に染まりました。
乳がんの正しい知識を広めて早期検診を進めることを目的に、10月はピンクリボンのキャンペーン期間として、世界規模で様々な活動が行われています。
今回は乳がんについて詳しい医学部の菰池教授に話を伺いました。

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そもそも乳がんとは

――がんの中で乳がんの割合はどのくらい?

2012年がん統計データにおいて、男女合わせて罹患数が最も多いのは大腸がん、次いで胃がん、肺がんと続き、乳がんは第4位となっています。
女性のがんの割合においては乳がんが断然多く、1990年代から現在まで女性の罹患数のトップです。2012年の統計では、女性のがん罹患の20.6%もの人が乳がんと診断されています。

――乳がんはどのような自覚症状があるの?

乳がんの症状として最も多く見られるのは乳房のしこりと言われています。
近畿大学医学部乳腺外科にて過去2年間乳がんの手術を受けられた方の受診契機をしらべてみると、1位「乳房腫瘤」64% 2位「症状なし(検診で異常を指摘された)」33%、となっています。

このような症状があったからといって、必ずしも乳がんというわけではないですが、早期に発見することが重要なので、恐がらずに専門施設にご相談いただきたいですね。

なお、乳房の痛みを訴えて受診される方が非常に多いですが、痛みそのものは乳がんと直接は関係なく、また、乳がんの進行状況とも全く関係がありません。我々の施設で手術を受けられた乳がんの方では、通常痛み以外にも症状を伴っており、痛みのみで発見された患者数は全体の1%未満でした。




乳がんになりやすい人

――何歳ごろが疾患しやすいの?

日本人女性において、最もかかりやすい年代は40歳代後半といわれています。ついで60歳代、50歳代と続きます。欧米人の場合は60歳代が最もかかりやすい年代で、日本人はかなり若い年代が罹患するがんであると言えます。


――体質や生活習慣、遺伝などとの関係はある?

かかりやすい体質としては、閉経後の肥満や出生時の体重が重いこと、高身長であることなどが挙げられます。また、初経年齢が早い、閉経年齢が遅いといった月経状態についても乳がんの罹患に関係があるとされています。

生活習慣については、運動不足や一定量以上のアルコール摂取が関係あるといわれています。
また、出産経験が多く、授乳経験が多いほど乳がんの発症率が低いことが知られています。

遺伝については、特殊な遺伝子の異常がある家系では乳がんの発症率が非常に高く、二分の一の確率でその遺伝子の異常が親から子に遺伝すると言われています。このような遺伝子の異常をお持ちであるかどうかは血液検査で調べることができますが、日本では保険診療では認められていません。
この遺伝子の異常がなくても、近親者に乳がんを罹った方がいれば、乳がんの発症率は高くなります。

乳製品を摂取すると乳がんになりやすいとか、大豆製品・大豆イソフラボンを摂取すると乳がんになりやすいなどと耳にしたことがある人も多いと思いますが、全く以て根拠はないのです。


乳がんと診断されたら

――現在の乳がんの治療方法は?

乳がんの治療法は、「手術療法」、「放射線療法」、「薬物療法(化学療法(いわゆる抗がん剤)、ホルモン療法、分子標的治療)」が挙げられます。単独での治療ではなく、これらを組み合わせて行うことで治癒率が高くなります。したがって、手術でうまく病巣が切除できた場合でも、それで治療が終了することはなく、通常は術後の薬物療法や、必要であれば放射線療法を行っています。

手術に関しては、昔のような大きな手術をすることはほとんどなくなり、多くの乳がんの患者さんで乳房を残すことも可能となり、不要にリンパ節を切除するということもなくなりました。また、やむを得ず乳房を切除する場合でも、乳房再建を行うという手段も普及してきています。薬物療法については、乳がんの性質(サブタイプといいます)に基づいて、個別に最も適した薬物療法を選択しているのです。


乳がんにならないために

――予防方法ってあるの?

予防方法についても決定的手段は残念ながらありません。
適度な運動を行う習慣をつけ、ストレスを減らすことは、乳がんに限らず多くの疾患の予防に役立つと考えられています。また、肥満は乳がんの発症に関連するため、適度な運動とバランスの良い食習慣(摂取時間も含めて)を保ち、体重管理を行うことは有効と考えられます。飲酒・喫煙も個人の嗜好の為やむを得ない部分はありますが、たしなむ程度にした方が、健康に良いことに間違いないでしょう。

海外では、乳がんを発症しやすいと考えられる方を対象にある種の予防薬を使用することもありますが、副作用の問題がある上に、日本では保険診療で認められていないこともあり、一般的ではないというのが現状です。
また、前述した遺伝子の異常がある場合には、将来的な乳がんの発症率がかなり高いことが確実なので、乳がんを発症する前に予防的に両側の乳房を切除する(希望により乳房再建を行う)という方法もあり、一部の施設で選択肢のひとつとして試みられています。

――乳がん検診って受けたほうがいいの?

乳がんは早期発見早期治療が原則です。特にステージⅠの段階で発見された乳がんの10年生存率は93.5%と、非常に良好な結果がでています。



自覚症状がなく検診のみで発見された乳がんの約80%はステージⅠまでに発見されています。一方、自覚症状を認めて受診された方の約50%はステージⅡ以上となっている為、乳がんの好発年齢(40歳以上)になったら、ぜひ乳がん検診を受けてほしいですね。



なお、2013年の検診の受診率は全国平均が34%、大阪は全国で最も低く27%という結果となっています。

――セルフチェックってした方がいい?

一方で、検診で必ずしも100%乳がんが発見されるというわけではありません。毎年検診を受けていたのに進行がんで発見されたというニュースを耳にすることもあると思います。
ニュース情報はある一面だけが強調されがちですが、検診が無駄であるということは決してありません。閉経前の方は生理が終わった後4~5日、閉経後の人は、毎月、日を決めての月1回のセルフチェックを行うことを勧めています。

定期的にセルフチェックを行うことで、普段は違う乳房の変化に気づくことができます。そうして変化に気づいた時は早めに専門施設にご相談することが大切なのです。

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