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長期化する避難。未だ被災地で続く、エコノミークラス症候群を防ぐには

エコノミークラス

Kindai Picks編集部

2016.05.10

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医療
健康
オリジナル記事

熊本県は5月8日、エコノミークラス症候群を発症し、入院の必要があると診断された患者が新たに1人増え、計49人になったと発表した。
東日本大震災発生時と同様、今回も被災地に弾性ストッキングを配付し、現地の医療スタッフと協力しながら静脈血栓症の発症予防を行った医学部 医学科 保田知生講師に、まだ油断のできないエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)について聞いた。

――熊本地震では、なぜエコノミークラス症候群の患者が多くみられたのでしょうか?

余震が極めて多く、夜間に家の中にいるのが不安で、車の中で寝泊まりする方が多くなったことが大きな要因でしょう。狭いスペースで同じ姿勢を続ける人が多く、発症に繋がった可能性が高いと考えられます。
また、本地震は直下型で多くの家屋が倒壊し、割れたガラスなどでけがをした人も多い。一般的にけがをすると血が固まりやすくなるため、発症リスクが高まります。
これらに加え、避難所はトイレの数が少ないため、トイレに行きたくならないよう、水分を取るのを我慢してしまった方も多いのではないかと思われます。


――どういうタイプの人が、エコノミークラス症候群を発症しやすいのでしょうか?

震災におけるエコノミークラス症候群の危険因子と考えられる項目は、以下の通りです。

・車中泊など、長期間の安静臥床(狭い身動きの取りにくい環境がよくないため、避難所でも起こる可能性がある)
・外傷(火傷や打撲も含む)や骨折後安静制限(下肢のギブス処置も含む)のある方
・脱水状態
・元々下肢の麻痺のある方
・認知症などで活動性の低下がある方
・高齢者(高齢であるほど血栓症既往の頻度が高くなり、発症しやすくなると言われています。しかし、中越地震では中年女性の死亡者が多かったと報告されており、若くても注意が必要です)
・日本人は女性に多い傾向があります
・血液が固まりやすい体質を持っている方
・感染症(肺炎や腸炎、その他の感染性疾患)などを起こしている方
・呼吸器に病気のある方(特に慢性閉塞性肺疾患。この病気は100%タバコが原因です)
・下肢静脈瘤など下肢の静脈にうっ滞がある方
・肥満、妊娠(妊娠初期の発症例は死亡率が高いと言われています)
・心不全のある方(特にうっ血性心不全)
・悪性疾患のある方
・腎不全の方(特にネフローゼ症候群)



――被災地に限らず、私たちの普段の生活にもエコノミークラス症候群の危険は潜んでいるのでしょうか?

被災地に限らず、私たちの普段の生活にもエコノミークラス症候群になる危険は潜んでいます。
たとえば入院中の患者は、ベットに長時間横たわっていると、血液の流れも悪くなり、エコノミークラス症候群を発症しやすいとか、バスやトラックの運転手は同じ姿勢を続けることで、エコノミークラス症候群を発症しやすいなどと言われています。
気候のよくなるこれからの季節や長期休暇などは、長時間、車やバス、電車や飛行機で移動する人が普段に比べて多くなります。すると、どうしても狭いスペースで同じ姿勢を続けることになり、エコノミークラス症候群のリスクが高まってしまいます。


――エコノミークラス症候群にならないためにやるべきことは?

もっとも効果的なのは、水分を取って血液の流れをよくすることです。
それに加えて、こまめに足を動かすなど、運動することが重要です。


――エコノミークラス症候群にはどんな前兆がありますか?

まず足に前兆が出ることが多いです。膝の裏やふくらはぎにむくみや痛みを感じた時は、注意が必要です。しかし、全く前兆がない場合もあるので注意が必要です。


――どんな症状が出たらどの診療科に行けばよいのでしょうか?

足にむくみや痛みがあると整形外科などに行きがちですが、整形外科で異常なしと診断されても、油断することなく、血管内科や外科で診てもらうことも大切です。

被災地のみならず、誰の身にも起こりうるエコノミークラス症候群。
車の中などで長時間同じ姿勢でいることを避け、歩いたり軽い体操やストレッチをしたりして足を動かす運動をすることや、こまめに水分をとるよう心がけましょう。


[プロフィール]
保田 知生 (ヤスダ チカオ)
所属 医学部医学科 講師
学位 博士(医学)
専門 末梢血管外科、消化器外科
静脈疾患、リンパ管疾患を主体に診療し、末梢動脈疾患の診療も行う。



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