2016.02.05
絶対世界一になるんや!トップアスリートたちの勝つための戦い方【前編】
- Kindai Picks編集部
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赤井英和×寺川綾×古川高晴×村上恭和×為末大
世界トップレベルで勝負してきたアスリートたちに、勝つためにこだわり続けている戦い方を聞いた。
<KINDAIサミット2015第4部分科会C「スポーツ立国近大!! ~メダリスト育成論~」より>
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スピーカー
村上恭和(むらかみやすかず)
卓球女子日本代表チーム監督・日本生命女子卓球部監督
1957年生まれ。小学6年生のときに卓球に出会う。近畿大学附属福山高校・近畿大学商経学部在学中も、一貫して卓球選手として活躍。1990年に日本生命女子卓球部監督に就任し、6年後には日本一に。1996年日本女子代表チームのコーチに、2008年には監督に就任。2012年のロンドンオリンピックでは女子団体で2位となり、日本卓球界悲願の初メダルを獲得した。
赤井英和(あかいひでかず)
近畿大学ボクシング部総監督・元プロボクサー
1959年生まれ。1984年に近畿大学商経学部を卒業。プロボクサーとして「浪速のロッキー」の異名を誇る活躍をした後、俳優に転身。2012年に母校である近畿大学ボクシング部が活動を再開するにあたり、総監督に就任。2015年には1部昇格に導いた。アマチュアボクサー時代の獲得タイトルは、「インターハイ・ライトウェルター級優勝」「アジアジュニア選手権ライトウェルター級優勝」など。
古川高晴(ふるかわたかはる)
近畿大学洋弓部コーチ・アーチェリーロンドンオリンピック銀メダリスト
1984年生まれ。青森県立青森東高校でアーチェリーを始め国体で優勝。近畿大学在学中にアテネオリンピックに出場。その後、近畿大学の職員になり、北京オリンピック・ロンドンオリンピックに出場。ロンドンオリンピックで個人銀メダルを獲得した。2016年のリオデジャネイロオリンピック代表選手にも内定している。
寺川綾(てらかわあや)
美津濃株式会社・水泳ロンドンオリンピック銅メダリスト
1984年生まれ。2003年に近畿大学附属高校、2007年に近畿大学法学部を卒業。大学2年生の時にアテネオリンピックに出場し、200m背泳ぎで8位入賞。さらに2012年のロンドンオリンピックでは100m背泳ぎ・400mメドレーリレーでそれぞれ銅メダルを獲得した。
モデレーター
為末大(ためすえだい)
一般社団法人アスリートソサエティ代表理事・元プロ陸上選手
1978年生まれ。中学生の時に全日本中学校選手権の100m・200mで二冠を獲得し、ジュニアオリンピックでは日本記録を更新した。以降、インターハイ、国体、世界ジュニア選手権などで短距離の新記録をマーク。シドニー、アテネ、北京オリンピックに出場。世界選手権では2001年エドモントン大会にて3位になり、トラック競技で日本人初のメダルを獲得した。著書に『日本人の足を速くする(新潮新書)』、『走る哲学(扶桑社)』など。
予算規模100倍!ライバルとの差を埋めるための戦い
為末:まずは卓球女子日本代表チームの監督をされている村上さん、卓球界ではどのように選手を育ててきたのでしょうか?
村上:日本の卓球界では、20年くらい前に世界で通用する選手を育てるための活動が始まりました。それで、まずは小学生の全国大会を作ったんです。低年齢の時から卓球に目を向けてもらうことで世界を狙おうということですね。また、選手だけが頑張っても強くなれませんから、日本卓球協会が主導でコーチの育成も行いました。その結果育ってきたのが、福原愛選手や石川佳純選手です。今は伊藤美誠選手や平野美宇選手といった、次の世代の卓球選手も出てきています。
金メダルを取ろうと思うと、やはり中国に勝たなければならない。日本はロンドンオリンピックの女子団体で2位になりましたが、1位の中国とは大きな差があります。そこをどう埋めるかを考えながら、次に向かっているところですね。
為末:中国の強さはどういうところにあるのですか?
村上:卓球はソウルオリンピックから正式な種目になったのですが、それが決まってから、中国は国家予算を投入して各地に卓球場を作り、指導者の育成も始めました。おそらくどちらも日本の100倍くらいの規模かと思います。
為末:中国の「数」に対して、日本はどのように戦っているのでしょうか?
村上:日本ではマンツーマン指導制を採用していて、選手一人に対して、専属のコーチや練習相手をつけているんです。集中投資ですね。
為末:赤井さんは現在、近大のボクシング部総監督ということですが、その活動について教えていただけますか?
赤井:私はプロのボクサーもやってきましたが、プロは一人でトレーニングしますし、試合も自分一人が勝てばいいんです。でも、大学のアマチュアボクシングでは9人や11人の団体戦ですから、仲間の繋がりがとても大切で、みんなで戦うという意識が欠かせません。ですから、練習もみんなでやりますし、合宿をしてみんなで同じご飯を食べて枕を並べて寝るということも重要です。
以前、リーグ戦が終わった後に、一人の選手に対して他のみんなからサプライズで誕生日祝いをする場面を見たことがあります。ケーキを持ってきて、みんなで試合会場で歌っている姿を見て、思わず涙が流れてきました。
為末:寺川さんは、現役の時に何か大切にしていたことはありますか?
寺川:コーチに対して嘘をつかないということです。コーチとはお互いに何でも話すという約束をしていました。正直、最初は水泳以外のことには立ち入らないで欲しいと思っていましたが、「腹を割っていろいろな話しをしないと何を考えているのかわからないし、一つ隠し事があると他の嘘もつかないといけなくなって良い関係性が築けない」と言われました。4年か5年くらい一緒にやっていくうちに、少しずつコーチの言っている意味がわかるようになっていきました。
勝利を信じ、自信を持て。自分との戦いが勝負を決める
為末:ボクシングで一番大事な要素は何でしょうか?
赤井:気持ちですね。心技体という言葉がありますが、ボクシングでは、「心→体→技」です。まずは勝ちたいという強い心が必要で、次にそれを持ち続けるためのスタミナやパワーがあり、テクニックは最後。技術も大事ですが、強くなりたいという気持ちを絶えず持っていることが大切なんです。
為末:あとは闘争心と言いますか、「絶対世界一になってやる!」という、ある意味ちょっと狂ったくらいの気持ちがないとダメだと思うのですが、その辺について何かお考えがあればお聞かせいただけますでしょうか。
赤井:私はいつも「夢は叶うもんや!」と思っていますし、学生にもそう伝えています。志を高く持つことでそこに近づいていくことができますので、いつも全日本のチャンピオンになるんだ、金メダルを取るんだという気持ちを持っておくように言い聞かせているんです。あと気持ちに繋がっているものに姿勢というのがあると思っています。ボクシングの場合は顎を引かないといけなくて、顎が上がっている時は、やっぱり気持ちが抜けている。顎をしめて下から相手を見据えるようにすることで敵に向っていけるので、そういう姿勢も大事にしていますね。
為末:古川さんは洋弓、つまりアーチェリーをされていますが、現在は選手でもありコーチでもありますよね?
古川:私自身、まだ現役の選手で、リオデジャネイロオリンピックの内定も頂いていますので、99%は自分のための練習をしています。そして、学生には先輩としてのアドバイスをするよう心掛けていますね。特によく話すのは、試合で緊張した時やミスした時の対処や、練習メニューについてです。
為末:アーチェリーというのは陸上競技とは対照的で、かなり静止した状態で行いますよね。強い選手と弱い選手を分ける要素は何でしょうか?
古川:言葉にすると、「集中力」や「精神力」ということでしょうか。緊張感がある中で、自分との戦いによって勝敗が決まるスポーツですから。そのために大事なのは自信を持つことです。不安があって「10点のところに飛んでいく気がしない」という時は、絶対10点のところに入りません。
私も自分に自信を持てなかった時期があります。卓球で言うところの中国と同じように、アーチェリーでは韓国が本当に強いのですが、韓国の選手に対して「自分の方が強い」と思えなかったんです。でも、相手より強いかどうかではなく、「自分ならこれは絶対に10点のところに決められる」と思うようにしてから自信を持てるようになりました。
為末:気持ちのコントロールという意味では、ルーティンの話がよくありますが、それについてはいかがでしょうか?
古川:私はあえてルーティンやジンクスは、持たないようにしています。例えば、試合直前に、いつも特定の音楽を聴いて集中力を高めるようにしていると、もし何かでそれを聴くことができなかった時、不安になって力が発揮できなくなると思うからです。アーチェリーでは、シューティングラインという線をまたいだ状態で矢を打つのですが、その線をまたぐ時も、左足と右足のどちらからというのは決めないことにしています。
後編では、世界レベルの実力をつけるための練習方法に迫ります。
<→世界一は夢じゃない トップアスリート4人のこだわりの練習法【後編】に進む>
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