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雑学・コラム

2021.10.19

大学生の私がSNSではなく「新聞投書欄」に意見を投稿する理由

Kindai Picks編集部

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昨今、急速にデジタル化が進む現代の情報社会。インターネットの世界では、言葉に対する責任はどこにあるのだろうか。疑問に感じた大学生が、新聞というアナログな媒体を通して得た知見について綴ります。

こんにちは!
近畿大学 経営学部 4年生の三井彗鈴(みつい すみれ)です。

突然ですが、質問です。
皆さんが、最後に自分の意見や考えを、紙に手書きで書き表したのはいつですか?

きっと、学生時代の作文が最後だという方も多いのではないでしょうか。また、手書きの文章ではないけれど、SNSやブログなどで日々の生活や考えを発信しているという人もいるのではないかと思います。



私は、大学生になってから特に、手書きの文章を書くことがめっきり減りました。レポート課題や論文はパソコンで作成してデータで提出しますし、自分の意見として感想文や作文を書くこともなくなりました。

パソコンやスマホのおかげで、難しい言葉も自動的に漢字に変換され、意味も簡単に調べられて、とても便利で簡単に文章を書く作業ができます。でも、その一方で、「気が付いたら平仮名ばかりの文章になっていたり、間違った文法を使ってしまっていたりするんじゃないか」という、文章を書く力がどんどん衰えていってしまう不安も感じてしまいます。

私と同じく「文章力の衰えが心配……」と思っている方に、ぜひ実践してみてほしいことがあります。それは、新聞投書です!


出典:2020年11月10日 読売新聞

新聞投書というのは、社会情勢などに対する自分の意見や感想を文章にして新聞社に投稿することです。投稿が採用されると、新聞の投書欄に自分の書いた文章が掲載されます。あまり馴染みがないかもしれませんが、何度も投稿して採用されている「投書マニア」と呼ばれる方もいらっしゃったり、新聞愛読者にとっては投書欄で一般の方の意見や体験談を読むのが楽しみだったりします。

この記事では、私が新聞投書を始めたことで得た知見や経験談を書かせていただきたいと思います!


なぜ、新聞投書? 私が始めたきっかけ




まずは、私が新聞投書を始めたきっかけからお話しします。

私の実家では、昔から新聞を定期購読していて、両親は毎日、新聞を読んでいました。なので、新聞に対しては割と馴染みがあり、高校生までは朝食時に朝刊一面や社会欄をチラッと読んだり、4コマ漫画をチェックしたり……。しかし、大学に進学すると同時に実家を離れると、新聞を全く読まなくなりました。

再び新聞を読み始めたのは、大学3年生の時です。

将来の進路で公務員を志望していた私は、公務員試験での時事問題対策として新聞購読を始め、毎朝隅々まで読むようになりました。実家にいたときには、なかなか隅々まで読むことはなかったので、細かい特集記事やコーナー記事、地方欄まで目を通すことはありませんでした。ですが、全部の記事をしっかり読んでみると、新たな発見があり、とても新鮮に感じました。

その中で、特に気になったのが投書欄です。
主婦や学生、さまざまな職業の一般の方々の文章が掲載されていて、いろいろな意見を知ることができ、とても面白かったです。そして、投稿欄を毎日読んでいるうちに「自分も投稿してみようかな」と考えるようになりました。

その理由が、3つあります。

1つ目は「論文の練習になるかもしれないということに気が付いたから」です。
私が合格を目指している公務員試験は論文試験があったのですが、論文の対策に何をしたらいいのか全くわからず、困っていました。誰でも文章を書いて送れるのなら、新聞投書はいい練習になると思ったのです。この理由が占める割合が、2割ぐらいです。

2つ目は、「投稿が採用されるともらえる図書カードが魅力的だったから」です。
「投稿してみようかな」と思い始めてから、新聞投書についていろいろ調べてみたところ、投稿が採用されると新聞社から図書カードが贈られることを知りました。本好きの私としては「採用されたい! 図書カードほしい!!」と思ってしまって……(笑)。実を言うと、この理由が7割を占めて、新聞投書をすることに決めました。

3つ目、私が新聞投書に惹かれた残りの1割の理由は、「新聞という媒体に対して信頼を感じたから」です。
私は書くことに興味があり、それを手軽に仕事にできたらという気持ちから、過去にクラウドソーシングでWebライターの仕事をしたことがあります。ですが、その仕事の内容は、ソースのわからない情報を渡されて「まとめてきて」というようなものでした。不透明な情報を頼りに、なんの専門家でもない大学生の私が文章を書くことに無責任さを感じて、1ヶ月も経たずに辞めてしまいました。
すべてのネット記事を書く仕事が、無責任なものだというわけでは決してないのですが、私はこの経験から違和感を感じました。でも、もしかしたら、新聞という信頼感のある媒体なら、責任を持って書きたいことを書けるのではないか……という期待があって、投稿を始めました。


採用される嬉しさはもちろん、編集者とのやりとりが面白い!



新聞投書の採用時にいただいた図書カードで買った本たち

こうして、ほとんど図書カード目当てで新聞投書を始めた私ですが、どんどんその面白さにハマっていきました。特に新聞の編集者さんとのやりとりが面白く、それがやる気に火をつけました。

採用された文章は、編集者さんの手によって校正されます。例えば、投書欄のサイズに合わせて添削されたり。誤字脱字がないかや、表現が適切かどうかをチェックされたり。そして電話やメールで投稿者へ連絡がいき、編集者さんと一緒に相談・確認して、投書した文章を整えてから実際に掲載されます。

編集者さんの添削で自分が書いた文章がより凝縮されコンパクトにまとめられていたり、表現が巧みに言い換えられていたりすることに初めはとても驚きました。私が書いた文章では上手く言えなかったことも、編集者さんが意図を汲み取り「そうそう! こういうことが言いたかったんだ!」と納得できる表現に直してくれていたからです。

プロの力に感動する一方で、自分の文章力が及ばなかったという悔しさもあり「次は編集者さんに負けないもっといい文章を書くんや!」という闘争心が込み上げてきて、定期的に投稿するようになりました。

そんなある日、何度も投稿して採用されたことで、編集者さんの方から「大学生の投稿者として取材したい」とのご連絡をいただき、インタビューを受けました。


出典:2021年2月21日 読売新聞

実は今、この記事を書いているのは、その記事を読んでくださった近大広報室の方のお声がけがあったからなのです。本当にありがたいことです。こうして投書を始めたことで、いろいろな人と繋がり、活動の幅が広がったことも面白さのひとつだと思います。


投書で身に付いた、文章力と情報を取捨選択する力




次は、投書を始めて私にどんな変化があったのかを紹介します。

まず、確実に文章力が付いたということです。これについては、ぜひお話ししたいエピソードがあります。

投書を始めたきっかけにも綴ったように、私は公務員になることを目指して勉強をしており、定期的に予備校の模擬試験を受けていました。そして、投書を始めて半年ほど経った時に、初めて論文試験の模試を受けることになりました。
論文に関しては全く勉強せずに「どれだけできるのかな〜」というお試し程度の気持ちで受けたのですが、採点された答案が返ってくると、なんと、100点満点中90点という点数が取れていて、驚きました!
そしてそのおかげもあって、本番の論文試験でも、満点を取ることができました。
編集者さんの添削で鍛えられた文章力や語彙力を実感でき、とても嬉しかったです。

次に、私が投書をして1番変わったなというところは、情報の取捨選択が上手くなったということです。

投書をするようになると、社会問題や出来事をこれまでとは違った角度から見るようになり、常にネタを探しながら新聞を読むようになります。そうしていくうちに、自分に必要な情報を見極める力が付いたなと感じるようになりました。
限られた時間の中で、膨大な情報量の新聞を一字一句漏らさず読むのはとても大変ですが、数ある記事の中から、重大なニュースと自分の興味・関心がある情報をピックアップして読むことで、取捨選択ができるようになりました。

この力は、デジタル新聞やネットニュースを読むことではなかなか身につかないと思います。なぜならそうした媒体では、そもそも自分が興味のある記事しかクリックしないからです。一目でさまざまな見出しや文章が飛び込んでくる、紙の新聞だからこそ身に付けられる能力ではないかと思います。


新聞投書にチャレンジする人に伝えたい5つのコツ



出典:2020年10月14日 産経新聞 朝刊/2020年9月15日、2021年1月19日 読売新聞

次は、実際に新聞投書をするにあたって私が思う5つのコツを紹介していきたいと思います。「挑戦してみたいな」という方はぜひ参考にしてみてください。


① タイムリーな話題で書く
これは実際に編集者さんからお聞きした話なのですが、その時々で話題になっているニュースなどを題材に書かれた投稿を採用することが多いそうです。なので、私は気になる記事を見つけたら3日以内に原稿を書いて送っていました。
皆さんも気になる記事を見つけて、少しでも「私はこう思うな」という意見を持ったら、なるべく早めに、とりあえず書いてみてほしいです。


② 原稿用紙に手書きで書く
実は投書はメールでも受け付けているところが多いのですが、私はあえて手書きの原稿を郵送することをお勧めします。

これも編集者さんからお聞きした話なのですが、最近の投書はメールでの投稿が増加しており、年配の投稿者よりも、特に若い世代の投稿者はメールでの投稿が多いそうです。私が初めて投稿した時は、編集者さんから「大学生が原稿用紙に手書きの投書を送ってきて珍しいなと思って、目に留まった」という言葉をいただきました。

確かにメールの方が気軽に投稿できますが、他の投稿の中で埋もれてしまわないようにするひとつのコツとして、切手代をケチらず郵送することをお勧めします。それに、原稿用紙に文章を書いているとちょっとした文豪気分を味わえて楽しいですよ!


③ 新聞社の論調に合わせる
新聞各社、地方紙含めそれぞれの特徴があり、特に社説の論調には違いが出ます。
大手新聞社を大まかに例えると、一般的には「朝日・毎日」がリベラル・左派、「読売・産経」が保守・右派、「日経」が中道と言われています。
各社の新聞を読み比べてみて、自分が「読みやすい、面白い」と思うものを選び、その新聞の特徴をつかんでみてください。そして、投書をする際は社説等の主張を参考に論調を合わせ、意見をまとめてみるのもひとつの手だと思います。


④ 社説や朝刊一面のコラムを参考にする
上記③とも関連しますが、社説や朝刊一面のコラムにはその新聞社ごとに特徴があります。
朝刊一面のコラムでは、少ない字数制限の中で季節ネタや時事ネタなどを絡めて取り上げていることが多く、ベテランの記者さんたちが書いているので、まとめ方など大変参考になります。朝日新聞の『天声人語』や読売新聞の『編集手帳』などが有名です。

実際に私は、読売新聞の『編集手帳』を1ヶ月間書き写してみたことがありましたが、ただ読むだけとはまた違った発見があり、限られた文字数の中で伝えたいことをまとめるという面でとても参考になりました。文章の構成や論文調の書き方などは社説の方を参考にしたことで、前述の通り模試で高得点を取ることもできました。

「朝刊をすべて読むには時間がないし、ハードルが高い!」という方でも、まずは一面のコラムと社説だけでも読んでみてほしいです!


⑤ 推敲する
これまで挙げたコツを駆使して原稿を書き上げたら、ぜひ何度も読み返して推敲してみてください。

原稿はあまり長すぎても使いにくいというのを、これまた実際に編集者さんからお聞きしたことがあります。どうしても載せられるスペースは限られているので、せっかく送っていただいた原稿を削らないといけないのは心苦しいのだそうです。できれば原稿用紙1枚〜1枚半(400〜600字)にまとめるのが、ベストだと思います。

ちなみに私は慣れてきた頃から「原稿用紙1枚以内にまとめる」と決めて投書を書くようにしましたが、なかなか難しいです。国語辞典を開いて言葉を探したり、何度も何度も書き直して投稿しました。
皆さんも投稿の際は納得のいく文章になるよう突き詰めてみてください。


なぜ新聞投書を勧めたいのか。もう一度見つめてほしい言葉の重み




最後に、私がなぜ新聞投書をお勧めしたいのかということについてお話しします。

私たちが自分の考えを主張する場は、どこにあるのでしょうか。

皆が一人一人それぞれ違った考えを持っていますが、それを世の中に発信する場としては、昨今ではSNSが主流になっていますよね。

確かにSNSってすごいです。いつでもどこでも言いたいことが言えて、それが世界中に発信されて、ものすごいスピードで情報が広がっていく。とても手軽で、便利で、人類はよくこんなものを思い付いたなあ、って思います。

でも、同時に、本当にそれでいいのかなあという不安もあるのです。

SNSを使って、簡単に自分の意見を発信してしまって本当にいいのか?
使い方は間違っていないのか?
自分が何気なく、無責任に放った言葉が誰かを傷付けていやしないか?
「匿名だから大丈夫だ」といって、何を書いてもいいのだろうか?
最近では、公的な立場にある人までがSNSで軽はずみな発言をしてバッシングを受けているけれど「自分はそうならない」と自信を持って言えるだろうか?

私はSNSの手軽さや便利さが、どうしても言葉に対する責任感を薄めていっているような気がしてならないんです。SNSの投稿は簡単に消せるけど、一度口に出した言葉であるとか、発信した言葉は本来は取り消せないからです。だからこそ重みがあるし、それを心から理解して、覚悟して発信している人の言葉は胸に響くのだと思います。

前半にも書きましたが、私はクラウドソーシングでWebライターの仕事をやってみたことがあります。でも、どうしても馴染めませんでした。「書くのが好きで、手軽に仕事ができるから」と思ってネットの記事を書いてみたけれど、一介の学生が書いた記事を誰かが信頼して読むのだと思うと怖くなりました。
言葉ひとつで、どこかにいる誰かの人生を変えてしまうこともあるかもしれない。そうなったときに、私はその責任を背負うことはできないなと思いました。

こうした経験があったから、新聞投書をやってみようと思えたのかもしれません。なぜなら新聞投書は、責任の所在がはっきりしているからです。
新聞投書では、実名、在住地、職業、年齢が投稿と一緒に掲載されます。どこの誰が書いたものなのかがきちんとわかります。

それに、「新聞」という、世の中に対して莫大な影響力を持つメディアに載るのだから、めちゃくちゃ考えて書きますよね。一語一句の表現を工夫して長文を書くから、ある程度の労力が必要です。それでも、伝えたいことのために時間をかけて書くのだから、それに対する自分自身の責任は大きくなります。

私は、新聞投書のそういったところに魅力を感じました。




自分の意見は、他者の視点も加わることでいい文章になる

こんな偉そうな意見を書かせてもらいましたが、よく考えてみるとこの記事を書かせてもらっているのも「Kindai Picks」というWebメディアのひとつです。
学生ライターとして初めて記事を書かせてもらいましたが、編集者の方と一緒に記事の内容を考えていく中で「こういうふうにすればいいんじゃないか」とか、私のアイデアや考えに「面白い!」といって賛成してもらえることは、とても嬉しかったです。
そういうところは、編集者さんとのやりとりを通して、掲載される原稿をブラッシュアップしていく新聞投書とも通じるものがあるのかな、と思います。

一人の視点ではなく、他人から見た別の視点が加わることでよりいい文章になり、読んでくださった方の心に響くという点では、Web上の文章であろうと手書きの文章であろうと、言葉の重みに違いはないのかもしれません。

自分の言葉が知らず知らずのうちに無責任なものになってしまっていないか、今一度見直してほしいです。そして興味のある方は、ぜひ新聞投書にも挑戦してほしいなと思います!

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




この記事を書いた人

三井 彗鈴(みつい すみれ)

1999年生まれ。近畿大学 経営学部 経営学科 スポーツマネジメントコース 4年生。体育会 空手道部所属。趣味は読書。好きな作家は浅田次郎、山崎豊子。


編集:人間編集部

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